システムは一度導入してしまえばOK、と思っていませんか?いえいえ、導入して終わりではありません。むしろ導入はスタートです。
今回は長く二人三脚で僕のサポートを受けて頂いている事業者さまの実例をご紹介しながら、進化し続ける必要性を感じて頂きたいと思います^ ^
このページでは次のような内容が書かれています。
- ご紹介する店舗
- システムは進化し続ける
- 最初はただのサンプルファイルから始まった
- 最初の1~2ヶ月目からカスタマイズ全開
- 半年も経たずに幾つもの機能を実装
- データの見える化で経営や業務をコントロール
- 経営の戦略にデータを活用
- カスタマイズは続く
- まとめ
ご紹介する店舗
今回実例をご紹介するのは、東京都内に修理工房を構えている「jeans704」(ジーンズナナマルヨン)さまです。ジーンズの破れや穴、擦り切れ等を修理してくれるジーンズ修理屋さんです。
jeans704さまの以前の記事はこちら↓
個人店舗向けレジ・売上管理・顧客管理システムのFileMaker個別レクチャー事例↗
個人店舗向けレジ・売上管理・顧客管理システムのFileMaker個別レクチャー事例<その2>↗
システムは進化し続ける
jeans704さまには約4年ほどシステム構築のサポートを継続して頂いており、現在(2022年)も続いています。最初はFileMakerによるレジ機能と顧客管理だけでしたが、4年も改善し続けると入出金管理やサービス別売上管理、顧客別の対応履歴ログなどFileMakerひとつで何役もこなすオリジナルのシステムに成長しています。
*トップの画面だけでも3年でかなりの変遷があります。
そうです、システムは一度構築したら終わりではありません。常に機能をアップさせることで、より業務の効率が進んでいきます。
業務効率だけではありません。日々データが蓄積されていくので、そのデータを元に今後の経営戦略のための指標を導き出すこともできます。
システムの進化は事業の拡大に繋がり、あるいは事業の堅持性を保つことの下地を支えてくれるのです。
当然機能はいきなり完成はしません。少しずつ少しずつグレードアップしていきます。過去を振り返りながら機能アップの過程を見ていきたいと思います。
最初はただのサンプルファイルから始まった
2018年8月、店主さまからご依頼を受けた時は、FileMaker で無料提供されていた請求書のサンプルファイルがあるだけでした。大したことは出来なくても良いから、このサンプルを使ってPOSレジのようにひとまず使えるようにしたい、そんなご相談を受けたのです。
当時、店舗移転により管理システム導入が早急に必要で、FileMaker なら何とかなるのではないか?と思ったそうです(以前少し触ってみたことがある)。
店主さまはそこまでパソコンに詳しい訳ではありません(キーを一つ一つ打つような)。
ただ、Web 販促や WordPress によるホームページ制作のスキルはアドバンテージがありました。
お仕事の状況から、だいたい週に一回のペースでレクチャーサポートをしていくことになりました。
最初の1~2ヶ月目からカスタマイズ全開
2018年8月に行ったカスタマイズ
- 自店舗用の売上顧客管理カスタマイズ開始(サンプルファイル『請求書』を利用)
- お預り・仕上り・お渡しのステータス状況をトップ画面に表示
- バーコードを読み込んで検索
当時店主さまが持っていた FileMaker Pro 16 で無料提供されていたサンプルファイルは結構(いや、かなり!!!)難しい造りになっていました。
恐らくご本人だけでは早急なカスタマイズ対応は難しかったでしょう。(だからこそご相談を受けたのですが)
店主さまの「ああしたい」「こうしたい」に対して、僕からは「それなら、こういう方法や、こういう方法があります。どちらが良さそうですか?」など、丁寧にヒアリングして一つ一つお教えしながら一緒に作っていきました。
とにかく最低限お店の業務で必要な、 ジーンズ修理の簡単な会計処理
- お預かり票の発行(納期管理)
- 顧客情報管理
簡単な会計処理や顧客情報管理はサンプルの機能でもある程度使えましたが、いつ預かっていつ仕上り予定か?お支払いは済んでいるか?など最低限の機能を追加しました。
カスタマイズするには難しい造りのサンプルファイルでしたが、どうにかこうにか店舗移転に間に合ってホッとしたことを思い出します。
●バーコードを読み込んで検索
ほかに特筆すべきはバーコードによる検索かもしれません。お預り製品がどのお客様のものかは検索して確認します。それをパッと検索するために、バーコードリーダーでお預り品に着いた(クリーニングでついてるようなタグの)バーコードを読み取ります。
読み込んでからの検索と詳細情報への移動は自動で出来るように組みます。
手入力での検索よりは圧倒的に早く確実です。そんな機能を1~2ヶ月の間に作れたのですから、まさに FileMaker のポテンシャルの高さを示しています。
このバーコードを使った操作は、例えば製造業などの生産管理でも応用ができそうですね^ ^
※画像の数値はすべてテストデータです。
ちなみにバーコードリーダーとは例えばこのようなものです。
[広告]バーコードリーダーを Amazon で見る>
半年も経たずに幾つもの機能を実装
2018年9月~12月に行ったカスタマイズ
- 日報・月報を集計印刷する機能
- 顧客別サービス利用回数・利用点数カウント
- 入出金管理(レジ金、資材購入費)
- 見積書管理追加(売上管理への転送)
- お渡しステータス一括更新
- 顧客別対応履歴ログ
- 見落としや入力漏れ対策(自動で色を出したり、メッセージを出す等)
ここからはカスタマイズが多くなってくるため、興味深い内容をピックアップする形でお伝えしていきます。
●日報・月報を集計印刷する機能
これは最終的に確定申告の際、外部の税理士さんに提出することを目的として機能追加しました。確定申告の時期にはこれらを PDF にして税理士さんの元に送ります。
そしてもちろん、自店舗の売上内容を日毎、月毎に見れたら良いという副次的な目的もありました。現金払いなのかクレジットなのか、そういった内訳でも集計できるので、内容をざっと確認することが出来ます。
FileMaker でこの機能ができる前までは、確定申告時には何かと手間暇がかかっていて大変だったようです。
この日報・月報の集計機能によって大幅に作業時間が短縮される結果が出ています。
●顧客別対応履歴ログ
ジーンズ修理のお客様は当然ながら多種多様です。お一人お一人の状況を記憶するのは限界があり、それを FileMaker で賄うという目的で機能追加されました。
いつ来店され、いつ金銭授受があったか、などは自動でログに残り、メモ的なこと(どんなやり取りがあったか、何か特別なお願いをされていたか、良いこと悪いこと、気になったことなど)は、手入力で随時記録できるようにしました。
これらの記録ログによって、再来店された際に前回どんなお取引があったかを確認することができます。
何か良いことが記録されていれば、それに関する雑談でお客様との信頼も深くなります。良くないことが記録されていれば、それに応じて予め対応することもできます。
お客様とのやり取りが非常に重要なお仕事ですから、顧客別の対応履歴ログは店主さまの大きな助けになっています。
※画像の数値はすべてテストデータです。
データの見える化で経営や業務をコントロール
2019年1月~10月に行ったカスタマイズ
- お客様用会計ディスプレイ
- 棚卸し管理(簡易版)
- お預り・仕上り・お渡しの状況グラフ化
- バーコード読み取りの使い勝手向上
- クレカ決済の種別を保持管理し、日報に項目追加
- 合算請求書対応
- 会計損益管理(銀行口座明細格納)
- 顧客一覧での対応状況表示
- 月別の売上と経費のグラフ化
- 作業コスト時間管理
- 作業予定量のグラフ化(仕上り予定の調整が可能に)
- 現金、キャッシュレス複合払い対応
●お預り・仕上り・お渡しの状況グラフ化
●月別の売上と経費のグラフ化
日報や月報が出せるということは、その数値をグラフ化も出来るということです。数値の羅列だと状況が分かりにくいですが、グラフになるとまさに「見える化」ができます。
お預り・仕上り・お渡しの状況グラフでは、推移を分かりやすく見れます。
季節要因を発見したり、毎年の傾向を見ることができることで、販促活動の戦略を練るヒントになります。
月別の売上と経費のグラフでは、あまり意識できていなかった経費の月別のボリュームを直感的に把握できます。
店舗経営のバランスを見る上で役に立つグラフになっています。
●作業コスト時間管理 ●作業予定量のグラフ化(仕上り予定の調整が可能に)
これは非常に大きなカスタマイズになりました。将来的な作業量の予測が可能になったことで、全体的な業務のバランスを調整できるようになったのです。店主さまお一人で運営しているのでかなり重要な機能になりました。
これまではお客様への仕上り予定を常に固定の期間(2週間)で組んでいました。しかしそれではお預り量が想定以上になるとキャパシティを超えてしまいます。
すると仕上りが間に合わなくなり、稀にお客様にご迷惑をおかけすることもあったそうです。
それが、将来的な作業量を視覚的にパッと把握できることで、仕上り日を予め調整することが可能になりました。店主さまもお客様も Win-Win の素晴らしいカスタマイズです。
ただ、この機能を実装するまでには作業時間を登録するなどの下準備が実は大変なのです。。素晴らしい機能の裏には多くの苦労が積み重なっていることを示す良い事例と言えます。
●現金、キャッシュレス複合払い対応
昨今の流れをくみ、お店はキャッシュレス払いに対応していました。ただ、決済会社ごとに管理が異なるため状況の把握が難しいのが悩みのタネでした。それを FileMaker で把握できるようにしようというのがこの機能です。
お客様のお支払いには幾つかのパターンがあり、複数のキャッシュレスを使用したり、端数は現金払いにするなど複合するパターンがあります。
この複合パターンに対応するのが想像以上に厄介でした。
当然ですが元々のサンプルファイルは現金払いのみを想定した造りになっていたので尚更厄介でした。また、お客様に見せる会計ディスプレイの表示も考える必要がありました。
実装後、コロナ禍になってキャッシュレス使用が増えたこともあり、複合するパターンのお客様も増えてきたとのことです。予め対応しておいたのはナイスでした。
もし FileMaker ではなく別のシステムだったら、きっとすぐには対応できないか、膨大な改修コスト(数十万~百万単位)がかかっていた可能性はあります。
※画像の数値はすべてテストデータです。
ちなみに会計ディスプレイにはサブディスプレイを使ってうまいこと表示させれば(スクリプトを使えば)できます。パソコンであれば縦長で使えるサブディスプレイは大抵は使えると思いますが、最近だとタッチパネルになったものも出ているんですね!時代は早い。
[広告]サブモニターを Amazon で見る>
経営の戦略にデータを活用
2020年1月~12月に行ったカスタマイズ
- 取込画像の再編集対応
- ビフォー・アフターの画像や動画の格納対応
- 電話番号下4桁検索対応
- サービス別の売上と作業時間の集計比較による今後の戦略指標作り
- サービスの内訳別でも集計を出す
- 顧客別対応履歴ログ第3版(より詳細な顧客とのやり取りを記録)
- 新規顧客とリピーターの状況解析対応
●ビフォー・アフターの画像や動画の格納対応
今後の資料や販促等で使うためのビフォー・アフター画像(動画)を残したいということで実装しました。FileMaker は画像や動画をデータベースとして取り込める特徴があります。
それまでも画像を格納できるようにはしていましたが、新たに増設して使い勝手や管理のしやすさを向上させました。
iPad や iPhone 用の FileMaker でそのまま写真を撮って格納するため、スマホ向けの画面レイアウトも制作しました。
パソコン用の画面をそのまま iPad や iPhone で表示することも出来ますが、使い勝手がかなり悪いので小さめの画面を別途作った感じです。
※最初から iPhone, iPad で使うと分かっていれば、パソコンとの兼用で使える画面で作ると思うので手間は減ります。事前の計画は大事です。
※iPhone, iPad で使うには、使用環境など色々と考慮べきことがあります。
●サービス別の売上と作業時間の集計比較による今後の戦略指標作り
この機能はとても興味深い結果を得ることができました。自店舗のサービスカテゴリ別に売上集計の円グラフを出します。別途、作業時間の集計の円グラフも出します。
すると、売上比率が小さいサービスにおいて、その比率に見合わない作業時間を多くかけていたことが分かりました。
要するに、かなり粗利の低いサービスだったということになります。店主さまもこの事実に衝撃を受けていました。
作業時間を多く取られ、その上クレームも発生しがちなサービスだったのです。この結果から、少しずつこのサービスの受付を減らす方針にするとのことでした。
こういった指標は経営判断の大きな助けになる場合があります。そして新たな経営戦略を考えるためには、粗利率を上げて少しずつ時間的・心理的余裕を生み出しておくことは重要かと思います。
※画像の数値はすべてテストデータです。
カスタマイズは続く
2021年1月~2022年3月に行ったカスタマイズ
- 月別の売上推移グラフを前年比較できるように対応
- これまでの機能で不具合の箇所を改善
- 忘れ防止用に簡易メモ機能追加(後で売上記録に紐づけ可能)
- 作業予定量のグラフ化スピード改善
- 顧客別対応履歴ログ第4版(重要度カテゴリやアラート設定)
- トップのダッシュボードのレイアウトを大幅に変更
- 年の集計表示と印刷
- PayPay・メルPayの決済入金内容を集計印刷に追加で出す
- 顧客別対応履歴ログ第5版(入力可能場所の増設と顧客との紐づけ機能)
●作業予定量のグラフ化スピード改善
将来的な作業時間を見える化するグラフを実装していましたが、データが溜まっていくほどにグラフ表示までの処理がどんどん遅くなっていました。数日分の集計をする際に、何度も何度も裏で検索をかけていることが主な原因でした。
調査と改善方針を決め、それまで30秒~1分近くかかっていた状態を3秒前後以内に表示できるように劇的に改善させました。
このように後から別のアプローチで改修を行えるのも FileMaker の良いところです^ ^
●顧客別対応履歴ログ第5版(入力可能場所の増設と顧客との紐づけ機能)
以前に実装したものを、更に使い勝手よくしました。直接修理に関係しない事や仮の事項など、顧客情報がまだ存在しないお客様とのやり取りも記録できるようにしました。
これによって、例えばお客様のご来店を忘れていたなどの "うっかり" がかなり激減したそうです。
もちろん、後でそのメモを顧客情報に紐づけることも出来るようにしています。
この顧客対応の履歴ログが蓄積されていけば、きっとこの先にまた何か有効なデータ活用に結び付けられるだろうと思います。
※画像の数値はすべてテストデータです。
まとめ
システムは導入したら終わりではなく、進化し続ける必要があるということを事例によってお伝えしてみました。最初の導入時のままでも業務効率は叶えられたかもしれませんが、そこで止まると事業や業務の成長も止まってしまいます。
あるいはキャッシュレスの複数払いのように時代の変化に合わせて機能アップをする必要もあるでしょう。
今回の事例では、とてもたくさんのカスタマイズが行われていますが、店主さまの向上心の部分も大きく関わっています。
「人」が向上心を止めない限り、システムも進化は続いていくということですね^ ^
今日も良い一日を♪
Blogger Comment
Facebook Comment